はじめに
どんな薬にも副作用はあります。
逆に言うと副作用がない薬には効果もありません。
バイアグラも勃起機能改善という効果がありますので、副作用もあります。
ここではバイアグラの副作用を代表例としてED薬で起こりうる副作用についてご説明します。
ED薬は多少の違いがあるものの、副作用はどれも共通しています。
一つ注意点ですが、ここでは代表的な研究で判明している副作用の割合を示しています。
バイアグラの副作用についての研究は繰り返し行われています。
そのため、研究によって副作用の割合が異なりますので、ご注意ください。
副作用とは
そもそも副作用とはなんでしょうか。
副作用とは薬の主な使用目的以外の作用です。
そもそもバイアグラの勃起改善という”作用”も、もともとは心臓の病気の治療薬として開発されたバイアグラの”副作用”でした。
バイアグラの開発時に、心臓の治療のために薬を使っているのに勃起してしまうという副作用に気づいたのです。
そこで、逆に勃起改善目的にバイアグラが使用されるようになりました。
バイアグラの副作用が起きる理由
バイアグラの勃起機能を改善するという作用は陰茎の血管を拡げることで起こります。
バイアグラの副作用は、バイアグラが陰茎以外の場所である頭や顔などの血管を拡げることで頭痛やほてりがでてきてしまうためにおこります。
バイアグラの副作用の実際の症状
薬の副作用を考える上で大事なことは頻度と重症度です。
頻度は、どれぐらい起こりやすいか。
重症度は、どれぐらい重症になるか、です。
重症(重大)なものでも10万人に1人にしか起きないようなもの、つまり頻度が少ないものはそれほど気にする必要はありません。
逆に軽症でも頻度が多いものは多くの方が経験します。
実際にバイアグラを飲む際に問題となることもありますので、どんな症状か、どういう対応をするのが良いか知っておくことで、より上手にバイアグラを使えます。
図に頻度と重症度によってバイアグラの副作用を分類しました。
① 頻度:少 重症度:軽
ほとんど起きなくて、万が一起きても軽症のため気にする必要はありません。
ここにあるものとしては採血での異常などが報告されています。
② 頻度:多 重症度:軽
症状 | 頻度 |
---|---|
頭痛 | 12.74 % |
ほてり | 10.19 % |
目のかすみ | 1.91 % |
消化不良 | 0.64 % |
めまい | 0.64 % |
鼻詰まり | 0 % |
これらの副作用はいずれも軽度で、時間が経てば自然によくなります。
頭痛に関しては、我慢できない場合には市販の痛み止めが有効です。
また同じバイアグラでも用量が多い方が副作用も出る確率が上がります。
頭痛とほてりの両方ともバイアグラ25mgよりもバイアグラ50mgの方が2倍ほど出やすいです。
ただし、あくまでより多くの人に出やすいということで、副作用が強いというわけではありません。
そのため、副作用のためにバイアグラを使用しにくいという方は一度50mgから25mgに変更してみることを検討してください。
(勃起改善作用も弱くなる可能性がありますが、人によっては作用は変わりなく使える方もいます)
また、ここでは鼻詰まりは0%と確認されていますが、実際に診察した方では鼻詰まりや鼻水を訴えられる方はいますので、鼻詰まりも実際は起こりうると思います。
③ 頻度:多 重症度:重
頻度が多く、重症度が多いものは幸いにしてありません。
このあとにご説明しますが、基本的にバイアグラに関して副作用で重症になる心配はいりません。
④ 頻度:少 重症度:重
バイアグラで報告されている重症となる副作用には
- 持続勃起症
- NAION(非動脈炎症性前部虚血性視神経症)
- 突発性難聴
が世界的に報告されています。
ただし、日本で実際に確認されたのはこれまで持続勃起症が1件のみです。
- 持続勃起症
持続勃起症とは4時間以上勃起し続けている状態です。
6時間勃起し続けると陰茎の細胞が傷んでしまいEDが進行してしまいます。
そのため、4時間以上勃起が続く場合には泌尿器科の受診が必要です。
- NAION(非動脈炎症性前部虚血性視神経症)
ほとんどは痛みのない、片眼の視力低下として気づかれます。
NAIONはバイアグラの副作用としては非常に稀ですが、そもそもの病気として全くないわけではありません。
アメリカではNAIONは年間10万人あたり2.3~10.2人が発症すると言われています(日本ではデータがありません)。
この数は分かりやすい例でいうと結核に近いです。結核は10万人あたり13.9人です。
「実際にあったことはないけれど、誰かがなったと聞いたことがある」程度にはいると思います。
これまでに説明したとおりバイアグラの軽い副作用として眼のかすみ、視界がぼやける、といったことはしばしば見られます。
ただし、急激な視力の低下や1日以上続く眼の異常があった際には眼科を受診してください。
- 突発性難聴
原因不明の急速に進行する難聴で、ほとんどは片耳だけです。
突発性難聴もバイアグラの副作用では稀ですが、そもそもの病気としては10万人あたり30人と稀ではありますが、病院では全く珍しい病気というわけではありません。
突然片耳(両耳)が聞こえにくくなった、聞こえなくなったという場合には耳鼻科を受診してください。
よく質問されるもの
- Q: 心臓によくないと聞きましたが。。。
バイアグラは心臓に負担をかけません。
バイアグラはかつて心筋梗塞などを引きおこすのでは、という話がありました。
しかし、その後の研究でバイアグラは心臓に負担をかけることはないことが確認されています。
ただしEDの方自体が心臓病のリスクが高いことや、性行為自体が心臓に負担をかけることから、バイアグラを飲んでいる方は一般の方よりも性行為中に心筋梗塞のリスクは高いです。
- Q: バイアグラは妊娠や精子に影響がでる?
バイアグラを飲んだ方の精子に変化があったという報告はありません。
また多くの方がバイアグラを飲んだ性行為によって自然妊娠をしています。
まとめ
バイアグラは副作用として主に顔のほてりや頭痛などが起こります。
頭痛に対しては市販の頭痛薬が効果があるので、お困りの方は試してみてください。
また、副作用がどうしようもないという方は他のED薬を試すかバイアグラ25mgに減量するという方法があります。
またバイアグラの副作用でどうしても使いにくいと言う方は、シアリスやレビトラを試してみることをおすすめします。
【参考文献】
ED診療ガイドライン 第3版より
バイアグラ インタビューフォーム 2020/03 (第16版)
あたらしい眼科33(5)’663~669,2016
平成28年 結核登録者情報調査年報集計結果について