はじめに
「バイアグラで死亡」という噂はネット上なので見かけることがあります。
バイアグラはそんなに「危ない」薬なのでしょうか。
実際には、バイアグラが死亡リスクを高くするという医学的な根拠はありません。
一方で、実際にバイアグラを飲んで死亡したという話もあります。
ここでは、バイアグラを中心に腹上死(性行為中に死亡すること)について、どんな性行為が腹上死しやすいのかについてご説明します。
バイアグラを飲んで死んだ人
バイアグラを飲んで死んだ人は実際に少なからずいます。
しかし、問題はバイアグラを飲んだから死んだのかということです。
たとえば、心筋梗塞はいつ来るかわかりません。水を飲んだ直後に心筋梗塞が起こるかもしれません。
しかし、それは水が心筋梗塞を引き起こすということにはなりません。
バイアグラを飲んで死ぬだ人に対して大きな原因はバイアグラではなく性行為そのものです。
性行為自体が体に負担をかけます。
性行為中の死因
性行為中の死因としては、心筋梗塞、くも膜下出血が多いです。
他にも大動脈解離などがあります。
つまり、性行為中の死亡は血管が破れることが主な原因です。
(より正確には、くも膜下出血が起こる詳細なメカニズムは分かっていません)
性行為は交感神経の働きが影響するため、同じ運動量でも通常の運動量以上に心臓・血管に負担がかかります。
性行為がどれぐら心臓に負担を与えるかはこちらから
バイアグラが死因になるのか
繰り返しになりますが、バイアグラを飲んだから死亡するということはありません。
ただし、バイアグラは本来性行為が難しいような人にも性行為を可能にします。
ED(勃起不全)の人は心臓が弱っていることが多いです。
バイアグラで性行為が可能になっても心臓がよくなっているわけではありません。
また、EDは高齢の方が多いのですが、高齢の方は医学的にもオーガズムに達しにくくなっています。
そのために、イクためにより激しい運動を必要とし、さらに心臓に負荷がかかります。
以上のことからバイアグラを飲んで亡くなる方はいるのです。
ただし、これらのことはバイアグラの用量を守って使った場合です。
そして一歩踏み込んでお話すると、日本ではバイアグラは50mgまで認可されていませんが、さまざまな研究データからみると100mgでも問題ないと思います。
海外ではバイアグラは100mgまで使用されていますが、日本に入ってくる際に体格が海外より小さいからという理由で50mgが上限とされました。
ただし、100mgは50mgよりも副作用もでる確率は高くなります。
そのため、100mg内服する際には注意が必要です。
また、**100mgを超える用量は世界的に使われていません。 **
そのため、飲んでも100mgを超えないようにしましょう。
死にやすい性行為
どんな人が性行為中に亡くなりやすいかということも分かっています。
根本的に心臓の病気がある人が危ないです。
他にも、性行為の条件によって死にやすい条件が分かっています。
- 若いパートナーとの婚外性行為
- 不慣れな環境での性行為
- 過剰な食事やアルコール摂取
また、性行為中の死亡例で報告されているものの多くは、愛人、売春婦、または自慰行為中に発生したものです。
おそらく、「特別」な相手の場合には、より興奮度が高いこともあり、体により負荷がかかるのでしょう。
まとめ
バイアグラ自体は心臓に負担をかけることはありません。
しかし、性行為自体が心臓に負担をかける行為です。
そのため、少し心臓に不安がある方の場合は、慣れない環境で性行為をする際には過剰な食事やアルコール摂取を避けるなどを心がけていただくことで少しでもリスクを減らすことができます。
正しい知識を身につけて上手に医療と付き合っていきましょう。
【参考文献】
J Geriatr Cardiol. 2020 Mar; 17(3): 169–172.
監修医師:老木悠人